第5回 分析的判断と綜合的判断とは何か?

こんにちは、主催者のHです。今回の記事から、現在開催されている『プロレゴメナ』読書会のレポートを掲載していきたいと思います。今回読んだ箇所は、「予備的注意」の第二節である「形而上学的と呼ばれ得る唯一の認識様式について」(pp. 32-35)でした。段落でいえば、一段落から五段落の途中までです。(はじめてご覧になる場合は以下の記事から読まれることを推奨します)
 


kantodokusyokai.hatenablog.com

 

 

 第二節の構成

第二節の構成は以下のようなものになっています。
①綜合的判断と分析的判断との区別一般について
②すべての分析的判断に共通する原理は矛盾律である
③綜合的判断は矛盾律とは異なる原理を必要とする。

 

そもそも判断とは何か?

・①で、論理的形式によってではなく内容によって区別するならば、判断は二つの判断、すなわち分析的判断/綜合的判断の二つに区別しうる、とカントは論じます。

 

・カント事典によれば、判断とは「S is P(主語は述語である)」といったような文・命題を、肯定・否定などを通じて現実と関係付けることを意味します。

 

・カントの言う「内容」とは、たとえば「S is P」という命題における「S・P」などののことを指しており、対して論理的形式とは「is」にあたると考えられます。

 

分析判断と総合判断の違い

・分析的判断と総合的判断の違いは、前者が述語が主語にすでに含まれているのに対し、後者においては述語は主語に含まれていないことです。その意味で、総合的判断は主語に新しいものを「付け加える」、「拡張的」な判断であるとカントは論じています。


・①の二段落目では、その具体例として「すべて物体は拡がりを持つ」と「若干の物体は重さを持つ」という二つの例が挙げられ、前者が分析的、後者が綜合的であると見なされています。今回の読書会では、この例が果たして具体例として適切であるのか否かについて議論が為されました。

 

・②では、分析的判断はすべて矛盾律に基づくがゆえにア・プリオリな認識であると論じられます。

 矛盾律古典論理学の基本原理の一つです。合理論者のヴォルフは矛盾律「同一のものが、同時に、存在しかつ存在しないということはありえない」と定式化しています。カント事典によれば、こうした矛盾律の原理は「矛盾を含むものは不可能なものであり、矛盾を含まないものは可能なものである」というふうに、可能性の概念を体系の出発点に置くことが出来るという点で、形而上学の第一原理として位置付けられるそうです。


・また、②の重要な点として、「S is P」という文・命題の「S・P」にあたる内容・概念・項が、たとえ経験的なものであったとしても、矛盾律に基づくならば、その判断はア・プリオリな認識であると考えられる点が挙げられます。この点を詳述する例として、カントは「黄金は黄色の金属である」という例を挙げています。

 

・③では、総合的判断は矛盾律に従いつつも、それとは異なる原理を必要とするとカントは論じます。

プロレゴメナ (岩波文庫)

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縮刷版 カント事典

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